最近の読書紹介。
これを出すかどうかは悩む…
結構なネタバレを含むので、読みたい人は以下は後で参照してください。
主人公-は、恐らく興信所の所長。
他に、興信所の所員と、警察官の3人組がつるんでいる。
(これは、以前の作品で「仲良し」になった経緯があるらしいのだが、私は前作をまだ読んでいないのでそこは知らない)
因縁の相手から、「ケッタイな依頼」を受け、断るに断れずなシチュエーションでその依頼に取り組むことになる、のだが…
あまりにスケールの大きすぎる事件、というか、バックなだけに、果たして「なんだかなぁ」という感じでもある。
そして、事件の鍵になるのは満州事変から終戦までの日本の戦時下。
そこで「何か」に関わっていた、今老人たちが、何を思ってこれまで生きてきたのか。
ミステリーではあるのだが、どっちかというと歴史ものな要素大。
特に、戦争マニアや歴史マニアではないので、この小説を通して知ったことはあまりに多かった。
恥ずかしながら、「疎開」というのは、「玉砕」とか「転戦」と同じ、軍部が都合よく作り出した言葉の置き換えだということを初めて知った。確かに、客観的に平たく言えば「田舎に逃げる」ことだから、戦争をやめる気が更々無い政府や御用筋からしてみたら、「逃げる」とか「避ける」というトーンになってはいけないわけだ。そして、「疎開」という単語、要は「ひらけていないところを(都会の人間が行って)開発する」という体にした訳か…実態は全然違ったのだろうが…
そして、戦争終盤の最中、東京の都心で、一般市民はどのような生活を送っていたのか。ミクロな視点で描かれる。「現時点」でまだかろうじて存命の方をモデルにしているから、その当時は10代後半から20代の前半、半ば、という設定だ。
1944年の暮れあたりから、日本は洋上での戦いにことごとく負け、その影響で都市部が空爆されるようになってきた。しかし、もうマスコミが報道する内容は政府の検閲に通ったものだけ、正しい戦況など殆ど一般市民には知らされることはなかったという。
焼夷弾が雨のように降ってきても「防空頭巾があれば大丈夫」などというお上の言うことを、純真に信じていた人がどれくらいいたのだろうか?
上下巻の文庫本だったので、いつものように風呂で読もうと読み始めたが、なんだか溺れそうなくらいヘビーな内容になってきて、とてもではないが湯に浸かりながら読む、なんてもんではなかった。
戦争がテーマではないのだが、戦争は重要な伏線になっている。
8月に読むにふさわしい本かもしれない。