サバ×サバな日々

メンタル不全により仕事からの敗走。休職というサバティカル、そしてサバイバルに向けて模索する日々のよしなしごと。

249 小説「パチンコ」を読む

 出張中に、「パチンコ」という小説を読んだ。以前、新刊で出た時に雑誌に載っていた書評を読んで気になっていたけれど買い逃して、そのまま暫く忘れていた。文庫になったタイミングで相棒が買ってきたようだ。先に読んで、読み終わったタイミングでの東京行きだったので、上下二冊を持って飛行機に乗った。

 

 

 

 上巻は、3日に手術の待機をしている間に読み終わってしまった。そして下巻は4~6日、仕事が終わった後と帰りの新幹線の中で読んでいた。

 非常にざっくり(1行で書くレベル)で説明するならば、20世紀に生きた在日コリアンの家系ヒストリーである。ただ、主人公の親世代、自分の若いころ、そして子供が生まれ、更に孫の世代、それぞれの世の中の状勢が反映されている。社会の授業ではさながら漢字の羅列の域を出なかった朝鮮半島への侵略(朝鮮併合と教科書では書いていたか)、その時に現場の人はどうやって暮らしていたのか。戦時中の一般庶民(どちらかといえば貧しい層)の様子。新聞報道を疑うことなく信じているが、(なぜか)知っている人は知っている本当の戦況について。疎開して農村で命拾いする代わりに田畑での重労働に耐える人。そして、今更気づかされた事実だが、疎開してくる人間を受け入れて働かせることで、闇市に共有する農産物がたくさん獲れることで儲けた農家。

 ストーリーの随所に、コリアンだからゆえの日本人からの差別的言動も描かれているし、家族のそれぞれが「果たして日本に来てよかったのか(朝鮮に戻ったらどうなるのか)」と考える瞬間がある。

 ちょうど、この本を読んでいるタイミングで、NHKのドキュメンタリー「72時間」が放送されて、しかも場所が生野の大阪コリアンタウンだった。お店を営んでいる人、買い物に来る人、それぞれ在日コリアンの方がいて、それぞれの抱える想いを一言二言語っていたけれど、小説の中の人物が持つ疎外感・痛みとも大いに重なる部分があった。

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 恐らく、コリアンの人をはじめとして、外国にルーツを持つ人ならば大いに共感する部分の多い物語だと思うけれど、決して日本人だと理解できない、とかそういうものではなく、万人に通じる喜怒哀楽、人生のいろいろが描かれていて、読み応えのある作品だった。

 ドラマや料理だけではない、コリアンヒストリーに、ぜひ触れてみてほしい。