普段、あまり映画館には行かない性質なのだが、気になる作品があったので映画館で観ることにした。1週間ほど前に雑誌だかネットだかの評判を見て、カンヌ映画祭でパルムドール受賞、そして今年のアカデミー賞候補にもなっていると聞いて、ふーん、と思ったのがきっかけだ。相棒に声を掛けたら、「じゃあ連休中、初日に観にいこう」と話がすんなりまとまり、前売りチケットを買うことにした。最近はネットで前売券が買えて、しかも劇場の座席指定までできるらしい。しかも、座席指定したチケットはQRコードがメールで送られてくるので、当日はチケット発券の必要も無し。便利になったものだ。
さて、映画の内容は、というと、(以下ネタバレを含むので、ネタバレが嫌な人は映画を見てから読んでいただければ)ああフランス映画だなあ、というのが一つの感想。誰もハッピーにならず、不条理さ満載で最後までいっちゃうのかー、というぐずぐず感。
登場人物はそんなに多くなくて、作家の女性(主人公)、夫、その子供である息子1人、飼い犬、弁護士くらい。舞台も自宅と法廷くらい。山中の別荘のような家に住んでいた作家夫婦のうちの夫が、自宅の窓から転落死。自殺なのか?事故なのか?事件(他殺)なのか?ということになり、目撃者がいない以上、どっちの可能性もあるーということで、妻が疑われ、裁判にまでなってしまう。検察側は当然有罪にしたいので、妻が仕組んだ殺人だ、と主張して、いろんな証拠を引っ張り出す。そして、視覚障害のある11歳の息子まで法廷で証言することになるのだが、果たしてその証言の信ぴょう性はいかほどに…というのが大まかなあらすじ。
妻役をやっている女優さんはドイツ人で、確かに演技は秀逸。導入部の描写も、なんとなくこの人怪しいなあ、と思わせる態度が随所に出ている。ただ、時間が経って裁判の過程になると、「もともと夫婦仲が良くなかった」とか、とんでもない証拠が出てきたりとか、「ああやっぱり」なのか「ええーっ」なのか、見ている方が心揺さぶられる、お前どっちやねんという展開になる。
ドラマが佳境になったところで、証拠の一環として録音テープ(とどういう状況で録音されたかの風景)が出てくるのだが、この妻の怒り方がドイツ人ぽいなあ、と見ていて納得した。ハリウッド女優、ハリウッド映画ならば、ここはギャンギャン怒鳴りあうんだろうけれど、喧嘩のボルデージが上がるにしたがって彼女が冷静になっていくのがまた見もの。
そして、邦画とかイギリス映画だったらば、最後の裁判が終わった後に、回想シーンとして、妻あるいは息子が夫(息子が犯人ならば父親)を突き落とすシーンが入り、「あーよかった、バレませんでした」(あるいは、本当の犯人は息子でした)という一種の「解決」が入ってエンディングとなるのだろうけれど、そうはならないのがフランス映画ゆえか。単純明快でないだけに、アカデミー賞獲得なるかどうかは、ちょっと微妙な路線。観る価値はある、けれどそれなりに疲れるので、根性込めて鑑賞することをお勧めする。