年始の目標、「月に1冊は名作を読もう」が堅調だ。
なんせ、ぶっ倒れて以来旅行に行くバイタリティは消え失せ、目下新コロの脅威にまさかのヒジョー事態宣言にと、旅行を阻む要素だらけだ。
3年前だったら、今頃は必死こいて残業して、その代わりにGWまでのカウントダウンをしながら毎日過ごしていた。年越してから4月までの残業代でGWにパーッと豪遊する、のが定番だった。
今はそんな気力が湧かない。第一、今年はこの状況じゃ出国もできないし、行き先も危ないし(というか、今では日本もの方が危険視されてるな)、大好きな香港は昨年来めっちゃくちゃだし、嗚呼もうどうなってんの、という感じだ。
そういう訳で、外に出て行くエネルギーをニュウヨーク出張と読書に充てている。
(以下は多分にネタバレを含むので、作品の核心を知りたくない人は読まないでください)
「罪と罰」3巻セットは、久々に名作大作のオーラに圧倒された。
その勢いで読み始めたのが推理小説。
ポアロがベルギー人という設定で、旧知の友人とフランス語で喋っている…のだが、その時点で自分の中では「入ってこない」感がある。
オリエント急行だから、なにか通過地点の名称旧跡が舞台になるかと思いきや、そんな事はない。ただ、言うならば「密室の事件」。犯人は逃げられない状況にある、というだけ。
そして、乗客の中に犯人が居ると察しをつけてポアロがあれこれ考え始めるのだが、正直、全員が胡散臭い。そもそも、ポアロは「偶然」その電車に乗っていて、いつもなら楽勝でチケットが取れる、ガラガラの筈なのに、「今日は満席です」って、その時点で怪しい匂いプンプンだ。仕組まれてる感満載ではないか。
私は早い段階で、車掌もグルじゃないかと勘ぐっていた。少なくとも、犯人の一味か買収されたか。しかしですよ。。。
乗ってたお前ら全員グルかよ、
というのは余りにも強引かつ大胆過ぎるオチの付け方だよなぁ。
まあ、小説なので、ぶっ飛んでてもいいのだけれど、オリエント急行と言う、(今は無いにせよ)実在の路線で語っていながら、最後のオチは「(普通に考えたら)あり得ないんじゃね?」と思う方向にぶっ飛んで行ってしまったのが、個人的には許せなかったのだ。それか、西村京太郎の読み過ぎで逆にトレインミステリーというのは時刻表とかのトリックを駆使すべき、というのが刷り込まれてしまっているのか。(苦笑)
その次は風情を変えて日本の文学。中島敦を読む。
確か高校だかの教科書に「山月記」は載ってたなぁ、漢語調のキリッとした端正な文体ながら、書いていることは結構人間味滲み出るものが多くて、そのギャップがまた味だ。
弓の名人の逸話である「名人伝」は大いなる皮肉ととるべきか?
他に、南洋パラオで記者をしていたこともあるので、パラオ時代の執筆もある。「幸福」という短編はパラオの昔話がベースになっている。権力者と従者、夢の中で何故かお互いの立場がいれ違う。どうやら中島敦はこういった「変身」や「別者になる」というシチュエーションに憧れるのか。
この本は短編が多いので、気がついた時にちょいちょい読めるのがいい。
更に教科書つながりで選んだのは魯迅。
「故郷」という小品が、国語の教科書に載っていた。20年以上、いやもっと経っても、楊おばさんの登場で、ああこういうストーリーだったっけ、と思い出す。
魯迅がこの当時の中国の風俗、特にネガティヴなところを痛烈に描いていたのに対して、ほんの少し後の中島敦が唐代や、もっと昔の中国を舞台に作品を創る。なんだかそのコントラストも、読む側にとって意外な関係性、連鎖で面白い。
まだまだ読む本はたくさんある。
どうせキンキュー事態宣言で、出歩くのもままならないので、溜まった本を片っ端から読んでいこう。
コレとか。
ロシアものに戻るならコレが待っている。