サバ×サバな日々

メンタル不全により仕事からの敗走。休職というサバティカル、そしてサバイバルに向けて模索する日々のよしなしごと。

431 最期は本名で、と言った男

先月26日だったか、桐島何某、という全国に指名手配されていた犯人らしき人が、鎌倉市内の病院に現れていたとニュースになった。末期がんになっていて、当初別の名前を名乗っていたけれど、「最期は本名で迎えたい」と言い出したらしい。

 交番の傍らや、繁華街、駅前なんかにずらっと指名手配犯の顔写真が並んだポスターが貼ってあるけれど、何某容疑者の写真は際立って古くて「昭和48年撮影」のものだった。これじゃあ、50年たった今の顔なんて分からない。

 確かに身長160㎝は男性の中では小柄な方だけれど、顔の特徴で例えばほくろや眉毛なんかだったら、整形手術で(多少)ごまかしていれば普通の人ならば気づかない可能性も高いだろう。

 世間の圧倒的少数ではあるだろうけれど、免許証も保険証も無い生活を50年にわたって続けていくってかなりしんどいこともあるだろうな、と思う。病気ひとつできないのだから。それ故、健康には気を遣っていたらしい。身バレしないように社会から隔絶されたところで生きていたのかと思いきやそうではなくて、住み込みでずっと同じ会社で働いていて、しかも行きつけの飲み屋もあって月1ペースで現れていた、銭湯にもよく通っていた…って、どう読んでも後半だけ切り取ればよくいる普通のオッサンだろう。

 そもそも、彼が関わったとされている事件も、50年逃げていたということは50年以上前に起こったことで、生でそれを知っている人も世の中の少数派だということだ(私も、生まれてすらいない)。いったい何を思って事件を起こしたのかは分からないし、今となってはどういう思いでその事件を捉えているのか(死の直前の取り調べでは「後悔している」と言ったとか言わないとか)、気になることはいろいろあるけれど、本当に終末だったのだろう、名乗り出て2日後の29日朝には亡くなってしまったそうだ。

 長年に及ぶ捜査が結実することはなくて、捜査関係者は無念だというけれど、じゃあ捕まえたら解決したのか、といったらそうとも思えない。死ぬ直前に「最期は本名で」と現れたのが彼の勝利宣言だとかいう噂もあるけれど、いやいや、50年も厳しい生活をして、死によって逃げ切ったーとは、個人的にはどうもしっくりこない。だからといって彼に同情する必要も無いし、悪は糺されなければいけないのだけれど。