その男を、(仮に)ルパンと呼ぼう。
初めてルパンを見かけたのは、街中の中華屋でだった。
灘区のJR駅東側にある中華食堂。いわゆる町中華的な店だ。
確か、いつものニュウヨーク活動の前に夕食に何か食べておこう、とその店に入ったんだと思う。店の中には4人で座れるテーブルと、更に奥には中華の代名詞・円卓テーブルもあった。
我々のオーダーした料理がテーブルに運ばれ、エビマヨを頬張っていると、奥の円卓からたまに笑い声や話し声が聞こえてきた。ふと奥の声の方向に目をやると、40代くらいの男性ばかり6、7人のご一行様が円卓を囲んでいる。その中の1人が、「ルパン」だった。あのアニメのルパン三世を彷彿とさせるような雰囲気がある。
普通のサラリーマンが宴会で盛り上がるには若干早いタイミングだったこともあり(確か、19時半ごろだった)、服装や雰囲気で、「サラリーマンじゃあなさそうだ、キョージュ研究者ご一行さまかな」、という直感が働いた。
別にルパンを含むその御一行様を煩わしいと思った訳ではないのだが、なんとなく存在が気になった。彼らは何者なんだろうか。そして、行きついた一つの仮説は、「山の上にある大学からやってきたんじゃないか」という説。それも理系の方々(除:医者)。
その時は、(なぜか)「あの御一行様は何処からやってきたのかねぇ」という興味本位で終わった。
それから暫くしてー1年くらいのスパンはあっただろうかー「ルパン」と再会することになる。
舞台は、またもや中華屋だった。しかも、同じ店ではない。駅は同じJRだけど、今度は西側にある別の店、ただ、こちらもザ・町中華な店だった。
確か、去年の3月頃だっただろうか。その時も、同じように銭湯に行く前で、腹ごしらえ、とその中華屋に入った。
通された店の奥に、既に食事中のグループがあった。若者と、やや年齢の高い男のグループ。その中のメンバーになんか見覚えがあるような…不思議な気分になっていたが、ワンタンを啜りながら記憶を辿っていて「!!!」思い出した。
「ルパン」だ。
前回は、同年代の人ばかりの御一行だったが、今回は、「ルパンとその一味」っぽい。男ばかりの集団だが、ルパンを筆頭に、若者もそれなりにいる。ということは…「ルパンは山の上の大学のセンセー」で、「理系」、今回一緒に中華を味わっていたのは、研究室のメンバーに違いない。若いのは、博士課程の学生や、ポスドクだろうか。ジャイアンみたいな奴もメンバーの中にいた。
一度ならず、二度も「中華屋」で「ルパン」に遭遇したのは、私だけでなく、相棒にとってもセンセーショナルな出来事だったようだ。「二度あることは三度ある」で、「今度はどこの中華屋で出会えるか」という予想もした位だ。
そして。
今日の朝、相棒に「テレビを見ろ!」と起こされた。タイマーで自動オンになったテレビに、朝の番組が映っている。そこに登場しているのが…
「ルパンだ!!」
2人して、ルパンのマスメディア登場、三度目の再会に目を見張った。
かくして、ルパンが「山の上」の人であること、「理系」のセンセーであることは証明された。我々の嗅覚の勝利。そして、更に驚いたのは、「ルパン」が、そうやってテレビに出るほど優れた業績を挙げている「スンバラシイ研究者」だということだ。
単なる街中の中華屋好きのオッサンではなかったのね(笑)。
それでも、またリアルに「ルパン」に再会したいので、六甲近辺でルパンが来そうな中華屋が他に無いか、調べてみることにしよう。
お客さーん、お代はちゃんと払ってくださいよ〜(本件はそんなことはない筈)