サバ×サバな日々

メンタル不全により仕事からの敗走。休職というサバティカル、そしてサバイバルに向けて模索する日々のよしなしごと。

サバイバル日記Ⅱ 88日目 親父、具合悪いってよ

 珍しく母親が、私の携帯に電話をかけてきた。晩9時を回ったころだ。いつもは自宅電話に電話してくるのだが、なんで携帯?!そもそも、進学以来実家を離れたが、どちらの親とも可能な限り距離を置いている。つまり、私は世間でよく見る「仲良し家族・仲良し親子」ではない。

 簡単に示すと、私の家族は父、母、2歳下の妹で構成されていて、この3人は私が実家を出てからもずっと変わらず同じ屋根の下で住んでいる。今年遂に母も後期高齢者の仲間入りをしたので父母は無職(年金暮らし)、そして妹だけが働いている。妹の仕事は言うならば地域限定職なので、転居を伴う異動は無いらしい。そして結婚するとか、交際相手と同居するとか、そういうイベントにも遭遇しなかったようなので、現在の家に住み続けて30年近くなる。

 幸か不幸か、誰かが亡くなった、という連絡ではなかった。少し安堵した。葬式に行くのは億劫だ。特に親戚の葬式となると、一番厄介だ。親兄弟が揃えば、大抵親孝行しろとか、他人の家族関係に口出ししてくる人が現れるからだ。

 で、母親の用件は「●●さん亡くなった」ではなかったが、「親父の具合が良くないから今日明日でなくともいいけど近いうちに顔を見せに来い」というものだった。はぁ。

 1週間くらい前、妹から変なLINEメッセージが来て、なんで夕飯のおかずのことを言ってるんだろうと思ったら、母親に送ろうとしたのを間違って私に送ってきたらしい。その流れで、父親の具合が良くない、ということは漏れ聞いていた。ただ、父親は持病があるとか、そういう人ではなかった。もちろん歳を取ったので、いわゆる高齢化の影響でなんやかんやはあるだろう。私はその内容について、いちいち詳しく聞くような性分ではないし、そういう関係性でもない。

 前後の経過の説明もなく、いきなり「会いに来い」というのもなかなかだが(恐らく母親は、私に対してこれまで全くと言っていいほど親の様子を心配したこともない、なんとも薄情な親不孝者と思っている)、そこまで言うのは、きっと「それなりに」悪いのだろう。正直、そこまで悪くなっていて今から何ができるのか、親孝行の真似事であっても意味をなさない気がする。

 本当に身動きができないほど時間的に拘束されているわけではない。実家に行くのに事欠くほど経済的困窮しているわけではない。行かない理由は無いので、3月中に実家に行く心積もりをしながら「わかったわ」とだけ言って電話を切った。

 電話の最中、私は話を聞いて「うんうん」としか言わなかった。何も訊ねなかった。かわいそう、とか、心配だ、という感情がゼロだった訳ではないが、取り乱すほど親密な関係ではなかったし、ないからだろう。

 誤解されそうなので、一応断っておくと、父や母から虐待されていたとか、そういう過去があるわけではない。ただ、物心ついた時からずっと、自分の家(家族)は自分にとって居心地のいいところではなかったし、拠りどころにも成り得なかった。自分が自分であり続けるためには、実家から切り離されることが必要だった。元々私を含めて4人でいた時も、家族のバランスはいびつだった。そして、私が抜けて3人になった後も、極めて危うい感覚で家族の力動が働いている(ようだ)。

 さて、行くにしても長居はしたくない。最短でやらねばならぬことを済ませられるに越したことはない。覚悟を決めて、乗り込むしかないのだ。