先週、父から封書が届いた。
普段手紙をやり取りする仲ではない。誕生日でもないし、結婚記念日でもない。
されば絶縁状でも送られたか、と邪推してしまうような時期のこの封書。
なんだろうと疑心暗鬼になって開封すると、更に謎は深まる。
中には私宛の1枚のダイレクトメール(ハガキ)が入っていた。
実家近くにある写真スタジオが、施設ビルの閉店に伴ってそこも閉業となったことを通知するハガキだった。
そもそも、そこを使ったことすら全く記憶にないが、20年ほど前なので、就職や進学を見すえて証明写真でも撮ったのだろうか。
一筆箋にはいつもと変わらない小さい字で父がひとこと書いていた。
「地元の●●が閉店しました。…」
●●の中にその写真スタジオはテナントとして入っていた。●●の閉店は、遠く離れた関西に住んでいる私でも一応ニュースで知っていた。
首都圏とはいえ、実家のある地域は「ど真ん中」ではない。ベッドタウンだ。嗚呼、やっぱり「便利になっていく」ことはないのだなあ、と思う瞬間でもあった。
父との関係は良くはない。悪くもないが、電話したり手紙をやり取りしたりする関係ではない。既に実家を出て20年になるが、父とは30年近く一緒に暮らしていないことになる。転勤族で、私が小学校高学年になった頃からは単身赴任となったからだ。
正直、お互い「どう付き合ったらいいのか分からない」のが偽らざる実情だろう。
だからといって、今の、この距離感(物理的にも精神的にも)を縮めていくとか埋めようとかってことになると「そこまでする必要性があるのかなあ」とも思う。
周囲にそんなことを言えば、「親不孝だ」とか「もう先が短いから…」といろいろ言われそうだ。そういう「悪意のない善意」に触れることもまたややこしい。
理想論を言えば、家族仲良く=家内安全なんだろうけれど、残念ながらそういうわけにもいっていないわが実家なので、これ以上自分を不安定にしないためにも、火の粉のかからない距離はキープしたい。