サバ×サバな日々

メンタル不全により仕事からの敗走。休職というサバティカル、そしてサバイバルに向けて模索する日々のよしなしごと。

サバイバル日記147日目(西東 三鬼の「神戸・続神戸」の世界を銭湯で味わう)

 夏休みに読もうと思って相棒から借り受け、パラパラと読み進めている本。

神戸・続神戸 (新潮文庫)

神戸・続神戸 (新潮文庫)

 

 まだ読了はしていないのだが、戦中の神戸の街中のホテルに滞留していた怪しげな貿易商人(筆者)が垣間見た神戸の風景を描いている。

 当時から神戸はインターナショナルな街だったのが、ホテルの宿泊客や登場人物から伺える。舞台になったホテルは焼失してしまい、現存していないそうだ。しかし、トアロード界隈や山本通など、道などはきっちりと今まで引き継がれている。70年以上前の匂いを感じながら神戸の世界を楽しんでいる。

 そういう神戸の雰囲気をほわんと味わいつつ読み進めていたら、今日行った風呂屋さんで初めて会うシニアマダムに声をかけられた。

 きっかけは私が持参していた砂時計に目を留めたからなのだが、その砂時計がドイツメイドだと知って、「はーん、ドイツって国はしっかりした国だからねぇ」という反応。そこからどういう会話になっていくのかと思いきや…

「●●●ってパン屋知ってる?」と唐突に神戸では有名なパン屋さんの名前が出てきた。確かにオーナーはドイツ人の方だったと記憶している。「私、●●●の主人と結構親しくて…3年くらい前に奥さん亡くなったけど」と言われ、ビックリした。

西宮に移り住んだ直後に、確か●●●のカフェに行ったことがあり、その時にレジの傍らにいたのが御年50くらいのドイツ人マダムだった。ただ、そのおば様に言わせると、「その人は娘さんじゃないかな」とのこと。

●●●はもともと山本通にあって、薪をくべてパンを焼いている小さな店だったんだそうだ。そのシニアマダムはもともと学校の先生をしていて、近所に●●●があったらしい。「明日、1斤くださいね」と店先で頼んでおくと、次の日は棚にずらっとパンが並び、紙でくるんだパンにはそれぞれ「○○様」と予約先の名前が貼り付いている、それで売り切りになる、そんな小さな商売をしているパン屋だったそうだ。

「私は●●●のパンで育ったようなものだよ、あんな小さな店が有名になるなんてねぇ」と懐かしそうにお湯の中で喋っていた。

●●●のパンで育つ、というのも凄いが、更に凄かったのは、「山手の方に親が家を持っていて、そこは昔(おそらく戦前戦中の話?)外人に貸していたんだけど、イギリス人が住んでて、女中部屋があってさ、女中部屋とイギリス人の世界はきっちりと分けられているんだねえ。しかもイギリス人が雇ってた女中ってのが凄いガタイのいい黒人でさ、80㎏くらいはありそうなのが、真っ白いエプロンして出てくるんだよ、家尋ねるとさ…」恐らく、親について行って家賃の集金にでも行った時の思い出だろうか。「外国人に家を貸す」とか、「イギリス人がすぐ近くに住んでいる」とか、「使用人まで外国人でしかも黒人」とか、半世紀以上も前なのに、さすが神戸だ。

話は●●●に戻る。

●●●の旦那さんは若いころからそれはハンサムで、娘3人を迎えに行くと、その旦那さん見たさに生徒はもとより保護者も列をなして押しかけて、まったく身動きできないくらいの人だかりができるくらいだったとか。今もかなりのご高齢だけど、全く衰えていないらしい。

息子はいないので、●●●は誰が継いだのか、3姉妹の誰かが後継者になったのかねぇ、とそのマダムは気にしていた。その辺りは詳しくないらしい。

しっかし、嘘でも本当でも、そんな↑なストーリーを風呂の中で聞けるとはすんごい。しかも、そういう世代の方とお逢いできるのも、そろそろ時間的に限りがでてきた。

ますます、銭湯に通う価値があるというものだ。

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