ひとくちに銭湯といっても、その形式は地域によって違う。
基本的に東京文化で育った私にとって一番ビックリしたのは、
「大阪の銭湯は浴槽がど真ん中にある」という事実だった。
「昼間のセント酒」等々見ていただければ分かるように、東京スタイルの銭湯は、脱衣所から扉を開けるとそこに身体を洗うカランがあって、一番奥の壁に張り付くように浴槽がある。
そして、壁には大抵富士山の壁画…というのがお決まりのスタイル。
(ほぼ)全ての銭湯がそうであると信じて疑わなかった私は、大阪スタイルの「ど真ん中浴槽」だったら富士山はどうやって見るんだ?という問いが湧いてきた。が、結論としては壁画はあってもなくても、というのが大阪スタイルなのか。
そして、大阪スタイルの浴槽には大抵浴槽の外ヘリに、段が付いている。
座り込むのにちょうどいい高さだ。
そう、この段差は風呂に入りやすくするのではなく、「そこに座り込んでお湯を汲み、身体をそこで洗ってしまう」という効率のために付けられている。
カランが空くのを待てないくらい、たくさんの人が銭湯に来ていた時代のアイディアだ。
そんなレトロな銭湯を訪ねたくなって、大阪は西成にある銭湯・福寿湯に突撃。
岸里駅を降り、昔ながらの住宅街を歩いていく。途中とってもローカルな商店街にも遭遇。
平成の建物もチラホラあるが、映画のセットのように時間が止まった感がある住宅も。
そんな中、ようやくたどり着いた風呂屋の外観は、カオスのような各政党のポスター…。
写真撮影していると、地元の方と思しきシニアのマダムに声をかけられる。
レトロな銭湯に入りたくてわざわざやってきた、と訪問の趣旨を伝えると、この方もお風呂屋さんの常連なのか、「女将さんも主人もとってもいい人よ〜、がんばってはるわ〜」と教えてくれた。
入湯前から期待が高まる。
玄関はこうなのだが、とにかく凄いのが靴箱!(昔はとにかく需要が多かったということだろう)
で、中は出たー、典型的な大阪風呂。
ど真ん中に二層、弁当箱のように区切られた浅い風呂と深い風呂。
壁際には右側に小さい箱の薬湯(この日はショウガ湯)、左側には岩が積んである風情のジェット風呂。
そして注目は床の石畳。ピッカピカ。
(石畳も大阪スタイル?今まであまりお目にかかったことがないので、コレ目当てで来てみた!)
ジェット風呂がややぬる目、それでも41℃以上。
ど真ん中の浴槽は43℃。
水風呂は無いが、入口すぐ傍に、水が溜められた水槽があるので、3分浸かっては水を被る、を数回繰り返したニュウヨーク修行。
気持ちよく湯上りは広い脱衣場なので着替えも楽々。
常連さんの洗面道具は置きっ放しになっていた。
とてもキレイなタイルの洗面台も必見。
訪れたのが日曜の昼下がりということもあり、入浴客はポツポツ(3名程度)、それもシニアの方ばかりだった。
着替えていたら同じく風呂上がりのマダムに「どこの町内から来たの?見かけんけど。自転車?」と聞かれた。そうか、此処はそれほど地元に根付いたお風呂屋さんなんだな。
(だからといって一見さんが入りにくいわけではないので、ご安心を!)
昭和30年代を追体験できる魅惑のスポット。
※お店の方に撮影許可いただきました。感謝!
福寿湯
営業時間:13:30–24:00
定休日:月曜日